アクアチム(成分名: ナジフロキサシン)は、皮膚科でニキビによく処方されるニューキノロン系の外用抗菌薬です。日本皮膚科学会のガイドラインでも、炎症を起こした赤ニキビ・黄ニキビへの外用抗菌薬は最高評価の「推奨度A(強く推奨)」に位置づけられています。
ただし、最初にとても大事な事実をひとつ。アクアチムには軟膏・クリーム・ローションの3剤形がありますが、「軟膏」にはニキビ(ざ瘡)の適応がありません。ニキビに承認されているのはクリームとローションだけです。この記事では、添付文書とガイドラインの原文にもとづいて、剤形の違い・効くニキビの種類・効果が出るまでの期間・やめ時までを中立の立場で解説します。
- 公開日: 2026年9月1日
- 最終更新日: 2026年9月1日
結論:アクアチム3剤形の違い 早見表

| 剤形 | ニキビ(ざ瘡)の適応 | そのほかの適応 |
|---|---|---|
| アクアチムクリーム1% | ○ あり(化膿性炎症を伴うざ瘡) | 表在性・深在性皮膚感染症 |
| アクアチムローション1% | ○ あり(ざ瘡専用) | なし |
| アクアチム軟膏1% | × なし | 表在性・深在性皮膚感染症(とびひ・毛包炎など)のみ |
- ニキビ治療で処方されるのは基本的にクリームかローションです。「アクアチム軟膏」で検索して情報を探している方は、手元の薬が本当に軟膏か、袋の記載を確認してみてください
- 使い方は3剤形とも1日2回。ニキビの場合は洗顔後に患部へ塗布が用法です
- 判定ラインも明確で、添付文書は「4週間で効果が認められない場合は使用を中止」「炎症性皮疹が消失した場合には継続使用しない」と定めています
アクアチムとは:日本生まれの外用抗菌薬

アクアチムの有効成分ナジフロキサシンは、1980年に大塚製薬が合成した日本発の成分で、製品は世界で初めてのニューキノロン系外用抗菌剤として1993年に発売されました。現在はドイツ・スペインなど海外でも使われています。
- 働きは殺菌。ニキビの悪化に関わるアクネ菌やブドウ球菌など、適応菌種に対して抗菌作用を発揮します
- 濃度は3剤形とも1%(1g中ナジフロキサシン10mg)
- 医療用医薬品(処方箋医薬品)であり、市販はされていません(詳しくは後述)
同じ目的で使われる外用抗菌薬には、クリンダマイシン(ダラシンTゲルなど)やオゼノキサシン(ゼビアックス)があります。どれを選ぶかは医師が患部の状態や使用歴から判断します。
【最重要】剤形で「効能」が違う。軟膏はニキビ適応外

ここが、ネット上の解説で最も曖昧にされているポイントです。添付文書の効能・効果を剤形ごとに正確に引くと——
- クリーム1%: 表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、ざ瘡(化膿性炎症を伴うもの)
- ローション1%: ざ瘡(化膿性炎症を伴うもの)のみ
- 軟膏1%: 表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症のみ。ざ瘡の記載はありません
つまり「アクアチム軟膏はニキビの薬」という説明は、承認の上では正確ではありません。軟膏はとびひ(伝染性膿痂疹)や毛包炎などの皮膚感染症のための剤形です。ニキビで受診してアクアチムが出た場合、処方されているのはクリームかローションのはずです。
もう1点、鮮度の高い情報を。ローション1%は薬価基準上の経過措置品目となっており、2027年3月末で薬価基準から削除される予定です(厚生労働省の薬価基準収載品目リストに明記)。今後、ニキビ用アクアチムは実質クリームに一本化されていく流れと考えられます。
どのニキビに効く?:「赤・黄」には推奨度A、「白・黒」には使わない

日本皮膚科学会の「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」は、外用抗菌薬の使いどころを明確に線引きしています。
- 炎症性皮疹(赤ニキビ・黄ニキビ): 「外用抗菌薬(クリンダマイシン、ナジフロキサシン、オゼノキサシン)を強く推奨する」——推奨度A。ナジフロキサシン1%クリームは海外の質の高い比較試験(8週・12週)で有効性が確認されています
- 面皰(白ニキビ・黒ニキビ): 「外用抗菌薬を推奨しない」——推奨度C2。菌の炎症が主体ではない段階なので、殺菌薬の出番ではありません
- さらに、アダパレン(毛穴の詰まりの薬)との併用も推奨度A。炎症を抗菌薬で抑えつつ、詰まりを別の薬で治療する組み合わせが標準です
まとめると、アクアチムは「赤く腫れた・膿んだニキビの、炎症がある期間だけ使う薬」です。白ニキビ・黒ニキビ・ニキビ跡には設計上向いていません。
効果が出るまでの期間と「やめ時」

添付文書とガイドラインには、期間の基準がはっきり書かれています。
- 判定ラインは4週間 — 「4週間で効果の認められない場合は使用を中止すること」(添付文書原文)。効かないのに塗り続けるのは想定されていません
- 治ったら続けない — 「炎症性皮疹が消失した場合には継続使用しないこと」(同)。予防目的でだらだら塗る薬ではありません
- 急性期は最大3か月が目安 — ガイドラインは急性炎症期の治療を最大3か月とし、その後は耐性菌の心配がない維持療法(アダパレンや過酸化ベンゾイル)へ移行する設計を推奨しています
「何日で効き始めるか」は炎症の程度によって差があるため一律には言えませんが、4週間使って変化がなければ、自己判断で続けず処方医に相談する——これが公式のやめ時・見直し時です。
正しい使い方

- 1日2回、ニキビの場合は洗顔後に患部へ塗布します
- 塗るのは患部(ニキビのある場所)へ。広範囲に予防的に塗り広げる薬ではありません
- 化粧水・保湿などのスキンケアと併用する場合の順序や、他のニキビ薬(アダパレン等)との併用方法は処方医・薬剤師の指示に従ってください
- 塗り忘れても2回分を一度に塗らないこと。基本の用法を守るのが最短です
副作用:多くは軽い刺激系

添付文書に記載されている主な副作用は、そう痒感(かゆみ)、刺激感、発赤、乾燥などの皮膚症状です。臨床試験での副作用発現率は、ざ瘡の試験で49例中1例(2.0%)、皮膚感染症の試験で76例中1例(1.3%)と報告されています。
かゆみ・赤み・かぶれ様の症状が続く場合は使用を中止し、処方医に相談してください。「悪化したように見える」場合も、自己判断で塗る量を増やすのではなく受診が先です。
耐性菌の話:この薬が「期間限定」で使われる理由

抗菌薬には、使い続けると菌が薬に慣れて効かなくなる(耐性化)という宿命があります。だからこそ添付文書は「必要最小限の期間」を求め、ガイドラインも抗菌薬の長期継続を避け、維持期は耐性の心配がない薬(アダパレン・過酸化ベンゾイル)に切り替える方針を明示しています。
- 「効いたから予防にずっと塗り続ける」は、この薬のいちばん間違った使い方です
- 逆に言えば、期間を区切って正しく使えば、ガイドライン推奨度Aの信頼できる標準治療です
- 処方が余っても、次にニキビができたときに自己判断で使い回すのは避け、そのつど受診してください(患部の状態が違えば適切な薬も変わります)
値段:薬剤費は驚くほど安い

アクアチムは保険診療の薬です。薬価(2026年8月時点)は——
- アクアチムクリーム1%・軟膏1%: 18.5円/g、ローション1%: 18.5円/mL
- ジェネリック(ナジフロキサシン1%): 17.0円
- 例えば10g処方なら薬剤費は185円、3割負担で約50〜60円です(このほかに診察料・調剤料などがかかります)
「病院の薬は高そう」というイメージとは逆で、薬剤費だけならワンコインでお釣りがくる水準です。市販薬を何本も買い替えるより、皮膚科で適した薬を出してもらうほうが安上がりなことは珍しくありません。
市販で買える?:買えません(そして代わりの「抗菌薬」もありません)

- アクアチム(ナジフロキサシン)は処方箋医薬品で、ドラッグストアやネット通販では買えません。スイッチOTC(市販化)の候補として検討された実績も確認できません(2026年8月時点)
- そして正直にお伝えすると、「アクアチムと同じ抗菌薬のニキビ市販薬」は存在しません。抗菌薬の管理は耐性菌の観点から医師の役割とされているためです
- 市販でケアするなら、殺菌成分(イソプロピルメチルフェノール)や抗炎症成分(イブプロフェンピコノール)など別のアプローチの市販薬になります。選び方は市販薬の比較記事で解説しています
- 「アクアチムを処方してほしいが通院の時間がない」場合は、オンライン診療という選択肢もあります。処方薬の全体像は皮膚科の薬一覧をどうぞ
アクアチムに関するよくある質問

Q1. 手元にあるのは「アクアチム軟膏」ですが、顔のニキビに塗っていいですか?
軟膏1%の承認効能にざ瘡(ニキビ)は含まれていません。とびひや毛包炎など皮膚感染症のために処方された薬のはずなので、ニキビへの流用は自己判断せず、処方医に確認してください。
Q2. 余ったアクアチムを、次にできたニキビに塗ってもいいですか?
おすすめしません。添付文書は「炎症が消えたら継続しない」「必要最小限の期間」と定めており、状態が違うニキビには適切な薬も変わります。新しくできたニキビはあらためて受診を。
Q3. ダラシン(クリンダマイシン)とはどう違うのですか?
どちらもガイドラインで推奨度Aの外用抗菌薬で、立ち位置は同格です。系統(ニューキノロン系かリンコマイシン系か)と剤形が異なり、使い分けは医師が判断します。「どちらが強い」という公式な序列はありません。
Q4. とびひや毛包炎にも使われると聞きました
はい。クリームと軟膏は表在性・深在性皮膚感染症(とびひ・毛包炎など)に適応があります。むしろ軟膏はそちら専用です。
Q5. ジェネリックでも効果は同じですか?
有効成分(ナジフロキサシン1%)は同じで、薬価はわずかに安くなります(18.5円→17.0円)。基剤の使用感の違いが気になる場合は薬剤師に相談してください。
Q6. 効いている間、ずっと使い続けてもいいですか?
いいえ。炎症が消えたら終了し、くり返す場合は維持療法(アダパレン・過酸化ベンゾイルなど)への切り替えを医師と相談するのがガイドラインの設計です。
まとめ:「炎症のある期間だけ」正しく使えば、推奨度Aの標準治療

- アクアチム(ナジフロキサシン)は日本発・世界初のニューキノロン系外用抗菌薬。赤ニキビ・黄ニキビへの外用抗菌薬はガイドライン推奨度A
- 軟膏にはニキビの適応がない。ニキビ用はクリームとローション(そのローションは2027年3月末で薬価基準から削除予定)
- 白ニキビ・黒ニキビには推奨されない(推奨度C2)。炎症のあるニキビ専用と考える
- 判定ラインは4週間。治ったら続けない・予防に使わない・急性期は最大3か月で維持療法へ
- 薬剤費は10gで3割約50〜60円と安価。市販では買えず、同じ抗菌薬の市販代替も存在しない
「処方されたけど、これ何の薬?」という疑問には、承認された効能がいちばん正確に答えてくれます。手元の薬の剤形を確認して、期間を区切って正しく使ってください。
免責事項
本記事は2026年9月時点のPMDA掲載添付文書・インタビューフォーム・厚生労働省薬価基準・日本皮膚科学会ガイドライン等の公開情報にもとづく一般的な情報提供であり、診断・治療の助言や特定の医薬品の使用を推奨するものではありません。アクアチムは医師の処方が必要な医療用医薬品です。使用にあたっては必ず処方医・薬剤師の指示に従ってください。薬価・経過措置等の情報は変更される場合があります。本記事は医師の監修を受けたものではありません。

